「SDGs先進都市フライブルク」出版

このたび、ドイツ在住の熊崎実佳さんとの共著で、京都の学芸出版社から「SDGs先進都市フライブルク」という本を出版しました。

序章、終章とSDGsの目標に沿って17章からなり、目標ごとにフライブルク市の取り組みを紹介しています。

SDGs視点での地域の取り組みとは何か、フライブルクの例を参考に自治体でSDGsを進めるポイントについても書きました。

学芸出版社ホームページ

http://book.gakugei-pub.co.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2713-6.htm

もくじ

序章 フライブルク市はなぜ「SDGs先進都市」と言えるのか

ドイツでもっとも「SDGs先進都市」に近いまち
─フライブルク市

  • 「SDGs先進都市」像は「SDGs」の語呂で表現できる
  • SDGsにいち早く対応
  • ドイツ南西部に位置するフライブルク市
  • ドイツ有数の活力のある学園都市
  • 生活環境の質も高い
  • フライブルク市はなぜ人気の町なのか?
  • 原発反対運動をきっかけにソーラーシティへ
  • 市民主導のローカルアジェンダ21の推進
  • 環境政策から持続可能な発展政策へ
  • ローカルコンセプトからグローバルなコンセプトへ

推進のための行政システム

  • フライブルク市議会
  • サステナビリティ評議会
  • 市役所のサステナビリティ管理部門

第1章 貧困をなくそう

貧困層へのケアと省エネ改修を同時に実現
─ヴァインガルテン地区

  • 住むのが好きな人が少ない地区
  • 住民参加による市営住宅の改修
  • 徹底した省エネ改修
  • 生活支援や安全性・利便性向上の工夫
  • 隣人関係・住民の繋がりの確立
  • 省エネとコミュニティ再生を同時に実現

第2章 飢餓をゼロに

市民の共同出資による有機農業
―ガルテンコープ・フライブルク

  • 新しい地産地消有機農業の始まり
  • 野菜の配布方法も環境に配慮
  • 持続可能な農業、食の安全、市民の交流と学び
  • イベントの例
  • 持続可能な農業とそれを支える市民の相互作用

第3章 すべての人に健康と福祉を

自然保育で身につく主体性―ホイヴェーク森のようちえん

  • NPO法人が経営する森のようちえん
  • 園舎はトレーラーハウス、園庭は森
  • 1日の保育の様子
  • 過度に介入せず自分で学ぶことで伸びる能力

第4章 質の高い教育をみんなに

生徒の主体性を高めるエコワットプロジェクト
─シュタウディンガー総合学校

  • 生徒が生徒に教える環境教育カリキュラム
  • エコワットプロジェクトによる省エネルギー
  • 「フィフティー・フィフティー」の先駆け
  • 自然と共生し・活かす「遊びの家」
  • 主体性・社会性を重んじる教育スタイル

オールラウンド型の環境学習拠点
―エコステーション

  • 公園の中にある公設民営の環境学習拠点
  • 「緑の教室」
  • 他の団体とのネットワークが多彩なプログラムを生む
  • 市民向けプログラムの例
  • 自由度の高さが学校や市民の環境学習活動を後押し

多種多彩なプログラムを有する生涯学習センター
─フォルクスホッホシューレ・フライブルク

  • 民主主義のための生涯学習センター
  • 政治から趣味まで
  • 時代とともに変遷するプログラム
  • 「すべての人のための教育」で人を幸せにする
  • 60の市民団体との連携で実施されるプログラム

第5章 ジェンダー平等を実現しよう

カフェや書店でジェンダー平等活動
─女性に対する暴力反対キャンペーン

  • 書店やカフェも協力する「女性への暴力に反対する16日間」
  • 多様なプログラム
  • 国際的な活動とのリンク
  • まだまだ薄い行政や市民の関心

第6章 安全な水とトイレを世界中に

水の問題に市民の立場からアプローチ─レギオヴァッサー

  • 硝酸塩など、目に見えにくい問題を提起
  • 約36%の地下水が「悪い」状態
  • 市内のドライザム川での自然再生の取り組み
  • 「世界水の日」でボトル入り飲料に警鐘
  • きれいな水や美しい景観維持のための「縁の下の力持ち」

第7章 エネルギーをみんなにそしてクリーンに

市民出資で太陽光や風力発電所を建設
─エコシュトローム

  • 市民共同発電所の設立を支援する民間企業
  • 市民参加で運営し利益を出す
  • 6基の風車を建てるために市民出資を募る
  • サッカーファンが出資してスタジアムの屋根にソーラーを設置
  • プロジェクトの進め方
  • 市民との信頼関係が事業成立のカギ

生徒主体で太陽光発電事業会社を運営
─独仏ギムナジウム

  • バイリンガル教育に力を注ぐ中高一貫校
  • ソーラー会社「スコレア」の設立
  • 楽しく刺激的な「会社」
  • 下級生を巻き込む「スコリニ」
  • エネルギーコンサルタントの支援

第8章 働きがいも経済成長も

企業との連携で行う職業教育
─リヒャルト・フェーレンバッハ職業学校

  • 開校約100年の工業学校
  • 学校はまさに「エコパーク」
  • 装置の制作や実験を行う生徒たち
  • 学校とクリーンなエネルギー産業との連携

クリーンエネルギーを販売し地域経済・雇用を下支え
─バーデノーヴァ

  • 環境保護がミッション
  • 供給電力の8割近くが再生可能エネルギー
  • グリーン電力と市民共同発電所
  • イノベーションファンド
  • コジェネレーションによる地域熱供給
  • 雇用・労働面でも貢献

第9章 産業と技術革新の基盤をつくろう

最先端の太陽エネルギーシステムを開発
─フラウンホーファー研究機構・ISE

  • ドイツ全土で約2万5000人が働く応用研究機関
  • 技術の幅広い応用に取り組む
  • コンサルティング会社が派生

第10章 人や国の不平等をなくそう

グローバルな貿易による不平等の解消を目指す
─ヴェルトラーデン・ゲルバーアウ

  • 「貧しい国」の製品をフェアな価格で販売
  • なぜフェアトレード商品が重要か
  • ドイツで成長するフェアトレード市場
  • お店はしだいに拡大
  • 平等な世界のために働く

第11章 住み続けられるまちづくりを

車の少ないまちづくりの中核を担う
─フライブルク市交通公社(VAG)

  • 交通公社はフライブルク市の第3セクター
  • 車なしで中心部へ行けるまちづくり
  • 乗り放題チケットの導入で利用者が拡大
  • 乗り換え利便性の向上
  • パークアンドライドやカーシェアリングの導入
  • 自転車専用道路や専用レーンの整備
  • 交通計画とリンクした都市計画

住みやすさ抜群、車に依存しない街
─ヴォーバン地区

  • 若年層の多い街
  • 市民主導で進んだヴォーバン地区の開発
  • 「カーポートフリー区画」と「カーリデュース区画」
  • LRTや自転車の利用を便利に
  • 交通量の少ない道路は子どもの創造的遊び空間
  • 自家用車保有台数は少なく住環境満足度はトップクラス
  • 市民が案を作る拡大市民参加

協働作業で作った環境配慮型住宅とコミュニティ
─ヴォーバン地区の建築グループ

  • 都市再生の先駆けとなったヴォーバン地区の建築グループ
  • 市は地区の4分の1の土地を建築グループに譲渡
  • 環境に配慮したコーポラティブ住宅「クレーハウス」
  • 電気・熱の自給が可能なクレーハウス
  • クレーハウスの経済性
  • 低炭素まちづくりに貢献
  • 人間関係も持続可能なコーポラティブ住宅
  • 住民ニーズに応える野心的な建築家

第12章 つくる責任つかう責任

リサイクル率60%超えを実現
─フライブルク市廃棄物管理・清掃公社(ASF)

  • 市が53%出資する第3セクター
  • リサイクルできないごみは有料で年間契約
  • ごみは4分別
  • 資源循環の拠点、リサイクリングセンター
  • 生ごみや草花はバイオガス化
  • 普及啓発活動も行う
  • 「フライブルクカップ」導入で飲料容器をリユース
  • ごみ排出量は20年間で約半分に減少

第13章 気候変動に具体的な対策を

歴史的建造物を保存しながら省エネに挑戦
─ヴィーレ地区

  • 歴史的町並みのあるヴィーレ地区
  • 困難な歴史的価値の保存と省エネの両立
  • コジェネレーションによるエネルギー高効率化の挑戦
  • 光熱費を3割削減
  • エネルギーの消費者から生産者へ
  • 建築物保存と省エネの同時解決でSDGsの考え方を体現

第14章 海の豊かさを守ろう

魚類保全のため、菜食の寿司を提供する
─魚のない寿司

  • 魚の消費はなぜ減らすべきか
  • 高まるベジタリアン、ヴィーガン向けの寿司需要
  • 植物性原料だけで十分おいしく、エシカルに
  • 河川から海へのごみ流出を止める
  • 陸地でも十分にできる海洋保全

第15章 陸の豊かさも守ろう

森の大切さや経済的価値を学ぶ拠点施設
―ヴァルトハウス

  • 森や林業に関する公設民営の学習拠点施設
  • カフェを備えたメイン建物と作業のためのログハウス
  • 「本物」に触れて実用的なものを作る学習プログラム
  • 1週間プログラムで子どもたちは劇的に変わる
  • ボートを製作して池に浮かべて乗る
  • 経済価値を生みだすことも学ぶ

第16章 平和と公正をすべての人に

ローカルな戦略でグローバルな武器貿易に反対
─兵器情報センター・リプ

  • 市民の手による軍事産業資料室
  • ドイツ企業の武器輸出を告発
  • ドイツ縦断アクション
  • 株主として企業の責任を追及する
  • 精力的なネットワークづくり
  • 生徒が自主的に平和デモを実施
  • 日本への警鐘

第17章 パートナーシップで目標を達成しよう

エコステーションと連携し生徒主体の環境活動を実践
─ヴェンツィンガー実科学校

  • エコステーションに隣接する実科学校
  • ソーラークラブ「ヴェンツゾーラー」とのパートナーシップ
  • エネルギー委員会
  • 自由な教育スタイルが多様なパートナーシップを成立させる

多様な市民団体の連携でSDGs達成を目指す
─アイネ・ヴェルト・フォーラム

  • ローカルアジェンダ21の流れを受けたネットワーク型組織
  • 人権・平等から食・農まで
  • 州のSDGsキャンペーンで「飢餓と食糧」を担当
  • 多様な協働、SDGs推進のハブとして

終章 「SDGs先進都市」を目指して

「SDGs先進都市」の成立要因

  • 高い市民の環境意識と活動への参加意欲
  • エネルギー関連産業の集積
  • コンサルタントや非営利団体の活動の活発化
  • 市民活動を支える学習拠点の充実
  • 学校や教員の自由裁量の大きさ
  • 公益性の高い活動を行って当然という市民風土
  • 大学入学前の若者がボランティア活動を実施
  • 計画段階からの市民参加と時宜にあった市民の取り組み
  • 議会と市民参画で成り立っている持続可能性管理システム

日本における持続可能な地域づくりの課題

  • 「実質的な市民参加」は、ほとんど実現していない
  • 真の地方自治も、まだ実現していない

「SDGs先進都市」に向けての日本流の取り組みのアイデア

  • S:市民主体の取り組み
  • D:同時解決の取り組み
  • G:世代を超えた目標(ゴール)に基づく取り組み
  • s:世界と繋がった取り組み

フライブルクのSDGs関連年表

注記一覧

おわりに