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2023/07/07

建築設計を目指す学生の表情が変わる授業 「居住環境デザイン演習」

環境システム学科には、建築設計を学ぶ学生が “名物授業” と呼ぶ「居住環境デザイン演習」があります。

 

写真は第一課題の講評会での様子。履修生の発表に対して卒業生から愛のある鋭い質問が飛んできます。

 

居住環境デザイン演習は、3年前期の選択授業であり、建築設計を進もうと考えている学生の多くが履修します。授業期間の前半は個人課題で住宅設計(7週間)、後半はグループ課題で公共施設設計(7週間)に取り組みます。

 

また、この授業は建築士試験指定科目①「建築設計製図」に該当しており、求められるものが多い分、学びも多い授業です。

 

6月初めに、前半・個人課題の住宅設計の成果を発表する講評会と懇親会が行われました。住宅課題を通してこの授業の特色を紹介します。

 

◆特色1
求められるものの多い授業ゆえに、様々なサポートを受けて設計課題は進みます。
教員は専任教員と非常勤講師の2人体制。授業時間は毎週木曜日4限と5限のエスキス(デザインチェック)が主ですが、それ以外にも“週末エスキス”という、オンライン上でのエスキスが実施されます(学生は任意参加で、教員が対応可能な週末のみ)。また、この授業の過去の履修生であった大学院生もTA(Teaching Assistant)としてこの授業に戻ってきてくれ、提出前には図面表現などを丁寧に指導します。

 

◆特色2
非常勤講師は基本的にオンラインで授業に参加します。実社会で働く建築士でもある講師がオンライン上で学生と向き合います。これはコロナ禍によって生まれた授業形態ではなく、本学の名誉教授である衣袋洋一先生が構築したWeb Learning Studio(WLS)によるものです。WLSの専用サイトにはログインした履修生の進み具合、施主(特色3参照)とのやりとりがログとして残ります。過去には英国・ロンドンから現地の日本人建築士が非常勤講師としてこの授業に携わる時期がありました。9,850㎞の距離と8時間の時差(ロンドンでは就業前8時が大宮での5限!)を超えて、大宮キャンパスの環境システム学科の学生と向き合っていました。

 

◆特色3
過去の履修生である卒業生が“施主役”として授業に参加してくれています。現役履修生が設定した自身の家族構成を、卒業生(と大学院生と学部4年生)が“施主役”をオンライン上で演じます。実社会では働く卒業生たちは、様々な要望を求めるリアルの施主たちと日々向き合っています。それゆえ、卒業生は施主のふるまいを熟知していると言えます。終業後の夜遅くにオンラインのWLSで履修生との施主ミーティングが行われます。また、施主役は匿名で行われます。どの卒業生(もしくは先輩)が履修生の施主役で担当していたかが明かされるのが懇親会でのクライマックスです。例年、講評会と懇親会は土曜日午後の開催しています。卒業生たちは社会人の貴重な週末に大宮キャンパスを訪れ、履修生の作品を講評してくれます。講評会で収まらなかった講評は、その後の懇親会に続きます。


以上、授業の特色をまとめました。


建築設計の世界では「建築設計業はコミュニケーション業」などと言われます。所属する組織の上司、部下、先輩、後輩などの人間関係だけでなく、施主、構造や設備など協働する組織の方々、そして、設計士の考えを実現してくださる施工現場の作業員の方々、と複雑かつ多様なコミュニケーションを通して建築は完成します。様々な人々とのコミュニケーションを実践できるのがこの授業の特色とも言えます。

 

今年は3年ぶりに講評会と懇親会が大宮キャンパスで対面で行われました。住宅課題で、自身のアイデアをまとめ、発表し、そして実社会で働く卒業生と議論をする機会を経ると、学生たちの表情がガラッと変わります。

 

 

 ↑ 履修生は、他の履修生だけでなく、卒業生や先輩たちなど多くの参加者の前で発表します。

 

 ↑ 履修生は自身の作品をA1サイズにまとめてプロジェクターで投影し、発表します。

 

 ↑ 2023年度の居住環境デザイン演習の履修生は30人! そこに卒業生、先輩などが集まって講評会が行われました。

 

 ↑ 履修生の発表に対して、卒業生である社会人の先輩から質疑応答の時間があります。優しくも鋭い質問が飛んできます。

 

 ↑ もちろん、履修生には教員との質疑応答の時間もあります。

 

 ↑ 講評会の終わりには、教員からは授業を通しての振り返り、第二課題に向けての注意点なども伝えられます。

 

 ↑ 居住環境デザイン演習の授業を構築した本学の名誉教授である衣袋洋一先生からの言葉も頂きました。その言葉には、現役の履修生はもちろんのこと、卒業生たちも背筋が伸び、あの頃に戻ります。

 

 ↑ 講評会が終わると、場所を生協のラウンジに移動し、懇親会が始まります。

 

 ↑ 授業はTAのサポートなしに成立しません。そのTAの乾杯の音頭で懇親会が始まります。

 

 ↑ 懇親会の見どころが、施主役の卒業生、先輩が誰であるかを当てる時間です。TAからのインタビューで「施主のお父さん役はどんな人だと思いますか?」などと聞かれて履修生は匿名でのやりとりの中から正直な印象を答えます。(続)

 

 ↑ たとえば「施主のお姉さん役は優しい女性の先輩だと思います。」と履修生がそれまでのやり取りでの印象を発表したとしても、その役割を演じていたのが、実は男性(おじさんが多い)だったりします。

 

 ↑ 講評会と懇親会は過去にこの授業を履修した学生との再会の場でもあります。教員(左2人)と話しているのは前年にこの授業を履修した学部4年生たち。現在、総合研究に取り組む彼ら、彼女らは昨年の授業からどれぐらい成長したでしょうか。

 

 ↑ 卒業生の集まる懇親会は、現役学生には現在の建築業界の動向を直接伺う貴重な機会にもなります。

 

 ↑ 懇親会でも名誉教授である衣袋洋一先生からの言葉を頂戴しました。居住環境デザイン演習の授業を構築した思いなど、現役生はもちろんのこと、卒業生も当時のことを思い出し、現在のそれぞれの立場に重ね合わせ、神妙に耳を傾けます。あれから、私たちはどれだけ成長したでしょうか。

 

 ↑ 授業サポートだけでなく、講評会と懇親会での司会進行を務めたTAによる“一本締め”で長い一日が終わります。お疲れさまでした!

 

以上。